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終わらない人 宮崎駿

「これは生命に対する冒涜ですよ。」

怒りを身体中から発しながら宮崎監督は言う。

画面に映し出された蠢く人。

人工知能が作った人間だ。

 

人工知能だからその人間の様なモノは頭を頭として動かそうとせず、

痛覚のないその体を前に進ませる。

結果、想像出来ない様な動き方をする。

体を這いずらせて頭を手のように使って前に進む。

 

これをゾンビ映画に使ったら気持ち悪くて面白い、

と嬉しそうに紹介するドワンゴの川上さんに宮崎さんは怒った。

川上さんは宮崎さんに新しい技術を紹介したかっただけだ。

 

でも宮崎さんは毎朝ハイタッチする身体障害者の友人に

その映像を重ね、怒る。

 

コミュニケーションが微妙に噛み合っていないけど、

僕はそこで怒る宮崎さんが好きだ。

 

"美しい物"を描きたい。

その"美しい物"が表面的な物ではなくて

純度の高い物に思えて。

 

色んなスタッフの才能を食い潰して描く

その美しい物をもっと観たいと思う。

 

「気付かないだけで世界は美しいって言うこと伝えたいんだよね。」

テロは無くならないし、排外主義が高まる世の中で

こんな風に言える人はなかなか居ない。

秒速5センチメートル

体調が悪くて体が動かないのでhuluで鑑賞。

 

 

観始めた時には

「あ~男がウジウジと昔の女引きずってメソメソしている話か。

そんなのは俺だけで十分なんだよな。

そんな自分が嫌いだし、そんな奴が主人公の映画なんて観たくもねーや。」

と思っていました。

 

実際その通りだったんですけど。

でも案外思っていたよりも湿っぽくもなく(湿っぽいことは湿っぽいけど)楽しめました。

 

そりゃーあんだけ想いが深ければ湿っぽくもなるでしょーな。

という感じ。

 

中学生で不慣れな電車乗りついで寒い雪空の中で文通している女の子に会いに行くってさ。

リア充先取りしすぎでしょ。

どんだけ恋愛体質なんだと。

 

僕が中学生の時には体の大きい同級生に殴られて泣いて

そいつが先生に怒られて殴られているのを見てまた泣いて

なんとか良い高校に行こうって受験勉強していた頃ですよ。

 

つらい。

 

でもやっぱりその頃の悔しさがマグマの様に残っているから

現在頑張れてるところもあったりする。

 

だから本作の主人公の気持ちも自己憐憫のロマンチスト野郎なんて言えないし

「君の名は」よりも近くに感じました。

「君の名は」の方が好きだけど。

 

2話のコスモナウトで鹿児島の女の子が、

片思いをしている相手である彼が見ているのは自分以外の誰かだ、って気付くシーン。

悲しいけれど綺麗でした。

なんで自分に興味のない人を好きになってしまうのかな。僕たちは。

 

でも好きだった過去の人をいつまでも想ってしまうというのは仕方ないよね。

男女の仲でもお互いがお互いをきちんと見つめ続けるってどの位の期間なんだろう。

 

何時の間にか自分の理想を押し付けていたり、自分の事しか見えなくなっていたり、

現代の生存競争を生き抜くための仕事ばかりを追い掛けてしまったり。

なんて事を考えたりしました。

 

でも同時に思ったのは、会社辞めてビール飲んで

タバコばっかり吸ってウジウジしてると、

 

ハゲるよ?

 

ハゲで無職は恋愛市場での価値が下がって一生独身の可能性もゼロじゃないよ?

ホントに過去の思い出の中でしか生きられなくなるよ?

 

髪の毛あるうちに就活と婚活を根性出して頑張ろうな、

って過去の自分に言いたい。

 

ちょっと湿っぽいイメージで敬遠していたけれど観て良かったです。

面白かった。

 

イニシエーション・ラブ

80年代の男女の恋愛を描いた作品で、ラストにどんでん返しが待っている、

という作品。

主演が松田翔太前田敦子

当時AKBを卒業した前田敦子が主演をするということで主にAKBクラスタ

話題になった作品。

 

~以下ネタバレ含む感想です。~

 

話のテンポも良いし、80年代の音楽も良い。

世界のマエアツこと、前田敦子がクソ可愛いし

舌足らずな話し方や子犬っぽい演技も上手い。

もうこの作品はマエアツじゃないとダメだよねって思ってしまうから凄い。

 

モテない鈴木夕樹がクリスマスのイルミネーションの前ではしゃいでいるのを見ていると、

自分と重ねて、良かったねえ!と微笑んでしまう。

気持ち分かるよ。

 

ただオチが脱力させられる。誰得なんだろうか。

女子的には鈴木達也にリベンジしてやった。という気分でメシウマなのか。

いや、まぁ分かるんですが。

 

するってぇと鈴木夕樹の立場って一体。

僕自身は達也より夕樹側の人間だからモヤモヤする。

大切にしてくれれば誰でもいいのかと。

 

でも恋愛ってそういう要素もあれば、やっぱり感性がどこかでマッチしていなければ

成り立たないんじゃないかとも思う。

繭子はやっぱり鈴木夕樹の事が好きだったのかな。ダサさも含めて。

頼む、そうであってくれ。

 

でも元カレと今カレのあだ名が一緒ってやっぱり繭子怖いよ~。

所詮繭子にとって男は誰でもいい感が出過ぎてるよ~。

女の恋愛は上書き保存って言うけどさ。早すぎるよ~。

プレゼントまで一緒て。

 

鈴木達也の立場ならどうだろう。

なんだかんだ言って自分の身を振り返るとそういう事もあった。

色々気を使ってくれる彼女の気遣いを当たり前に思って自分の事で一杯一杯で彼女の将来まで

考えられる余裕がなくて。

でもそれはそれで仕方ないよなあ、と思ったりもする。

 

彼女の気遣いに乗っかり過ぎると、とんだしっぺ返しが来ると。

男の人には胸に刺さるものが有るハズです。

 

正にイニシエーション・ラブ

観て損はありません。

 

江口のりこが好きだ。

ドラマ「地味にスゴい!校閲ガール・河野悦子」で久しぶりに江口のりこを見た。

 

いつもキレ気味の演技。

イライラした感じの役ばかりだ。

 

絶対に側に居たくない。

目付きが悪いし、いつ怒られるか分からないし、誉めてくれる事も無さそうだし、笑顔を見せてくれる事も無さそうだ。

そして笑顔を見せてくれても案外可愛くない。

 

しかし何故か画面に写ると目で追いかけてしまう。

 妙な色気を感じる。

 

振り向いてくれない人を追いかけてしまう習性なのか。

面白味のない自分に足りない強い個性に引かれているのか。

 

それでも以前より雰囲気が丸くなったかな。

彗星よりも早く走れ。「君の名は」2回目

 

スパークルのカバー動画を聞いていたら何故か無性にもう一回観たくなって映画館まで足を運びました。

一回目は全く期待しないで行ったから、音楽も映画の勢いに呑まれてちゃんと聞いていなかったし。

でも、シン・ゴジラの二回目を観た時には一回目程感動しなかったので

「俺は音楽と映像を鑑賞しに行くんだ。」ハードルを下げて行きました。

その結果

 

最高だった。

現在アラサー越えが近い僕がこの映画観て思い出したのは自分の高校時代。

お気楽でボンクラな僕は両親や学校、部活に守られて、不良に殴られたり、数学のテストで4点取ったり、

好きな人に軽蔑されたりしつつも、今思えば呑気な学生生活を送っていました。

 

その頃の朝の光は映画のようにキラめいていたし、

なんとなく将来を疑わなかった時代です。

そして他人には分からない”何か”を追いかけていたあの頃。

その”何か”は自分にとってとても大切だけど、傍から見ていれば滑稽で笑いの種だったりして。

自分自身を全肯定出来た時代を過ぎて、社会からの風当たりの強さ、他人や異性からの評価をより意識し、不完全で弱い僕は己の未熟さをその”何か”のせいにして捨ててしまったけれど。

 

でもその”何か”のお陰で知らない人に助けてもらったり、道を教えて貰った事もある。

大切なハズの”何か”を忘れてしまう悲しみを体験することも出来た。

記憶は本当に失われていく。

手ですくった水が指を通り抜けていくように。

 

社会に出て10数年。

パワハラやそれに対抗するためのスルースキルの獲得。

社内政治、競合他社との地味にギスギスする感じや顧客企業との主導権争い。

高校生の頃、淡くぼんやりと人間が好きだったけれど利害関係で他人を計る事が多くなって、それは自然で当然かもしれないけれど。

上がらない給料や社会からの疎外されそうな不安感。

婚活や母の死。

 

高校生の時よりもリアルでガチな、現在の生存競争を生きていれば尚更忘れる速度も速くなります。

 

映画を観ていて”結び”の話がありました。

「絡まって、戻って、それは時間。それが結び」という話がありましたが僕は映画を観ていて高校生に戻った感覚を感じました。

映画はキャラクターに過去との遭遇を経験させることで観客自身をその過去に戻す力がありますが、本作の瀧や三葉を観ていて自然と高校時代を思い出しました。

 

一回目に観た時はちょっとナメたスタイルで観ていたのですが

二回目ではしっかり者の妹はトトロのメイに重なりました。大切な母を亡くしてそれでもしっかりしようとしている感じが。

「僕が愛したのは一葉です。神社じゃない。」と言う、普段分からず屋で高校生には理解しにくい三葉のオヤジが大切にしていた母の思い出。

こういうシーンを入れることでキャラクターの実在感が立ち上がってきます。

 

地域の人間関係や家業を背負わざるを得ないてっしー事、勅使河原と三葉のプレッシャーが前半で描かれているからこその後半の痛快な暴走(にも見える避難誘導)。

からのRADWIMPSの音楽に合わせた隕石衝突とその災害回避のため奔走。

やっぱり未来は変えられないのか。忘れてしまう大切な人。掌に書かれた言葉。

という情報量でジブリピクサーでも見られないような疾走感。やっぱりアツいです。

 

瀧が最後に三葉と入れ替わった朝のヌケの良さも良いですよね。

こんな朝でも泣きながら揉むんだなって。

全体的に緊張と緩和のバランスが良いです。

 

「君の名は」二回目もやっぱり最高でした。

haruhumi.hatenablog.com

 

スーサイドスクワッド

映像的な世界観は上手く作れているのに、イマイチ突き抜け感が無いのは脚本のせいだと思う。

僕は基本的に脚本の構成よりも映画そのものに勢いがあれば気にしないし、矛盾点は拘らないというより、気付けない事の方が多い。

 

それでも本作の脚本は雑だと思ってしまう。

 

罪の重さと比較すると、共感力の高い犯罪者達。

その共感力があれば犯罪起こさなくて良いのに。

 お涙頂戴のシーンを入れるならひたすら自分の事しか考えないキャラクターにして突き進んでくれた方がヌケが良いと思う。

 

どうせ世界を破滅から救ってもまた犯罪起こすんでしょ?

という言葉が頭をグルグル回って集中できない。

 

それを考えるとデッドプールは同じ様な悪キャラでエグいジョークも悪ノリな残酷描写も突き抜けてる。

チョイ古な音楽、普段は悪役だけど、悪役から大切な人を助ける、という同じ様な構成なのに何でこんなに差が着いた…。

 

 

haruhumi.hatenablog.com

 

 スーパーマンバットマンの世界観ならこの前の作品で本作のキャラクターをチラ見せさせないと、キャラクター紹介でストーリーの3分の1を使って物語が薄くなる事を防げたんじゃないか。

なんか全体的にとっ散らかってしまっている印象。

ウィル・スミスが美味しかった。

ほぼ彼の為の映画でした。

日本市場向けのオマケキャラだと思ってたけど意外にカタナの衣装が一番カッコいい。

案外美味しい役でした。

けど「見えない!」はちょっと笑っちゃう。

 

 

 

 

君の名はとシン・ゴジラはコインの裏表

どちらも震災がモチーフになっている。

片方は様々なパワーバランスの上で

もう片方は恋愛を通して。

「こうであって欲しい」

という願いは映画の中で叶えられる。

皆の力を合わせれば。

震災の直前に戻れれば。

 

現実は違う。

福島原発が「アンダーコントロール」というのはどうしようもない嘘っぱちだ。

皆で力を会わせようと思っても縦割り行政と保身的な企業の前に怒りばかりが燻っている。

でも政府の嘘に怒るのは疲れたし

放射脳」だ、「推進派」だ、と国民同士で蔑み合うのも疲れたし、

大切な人を思い出して悲しむのも少しだけど心が落ち着いてきた。

 

そんなタイミングでこの2つの作品は顔を出した。

 

原発を語ればお互いの主義主張でいがみ合うけど、映画を通して語れば自分のモヤモヤした感情を少し昇華出来る。

主義主張は譲れないけど映画の感想なら語り合える。

多分、本当は皆不安で語り合いたいのだ。

 

行く手は明るくないけれど。

それでも前に進むしかないから。