夜と霧

「私が恐れるのはただ1つ、私が私の苦悩に値しない人間になることだ。」

「行動的に生きることや安逸に生きることだけに意味があるのではない。そうではない。およそ生きることそのものに意味があるとすれば苦しむことにも意味があるはずだ。苦しむこともまた生きることの一部なら、運命も死ぬことも生きることの一部なのだろう。
苦悩と、そして死があってこそ、人間という存在ははじめて完全なものになるのだ。」

「涙を恥じることはない。この涙は、苦しむ勇気をもっていることの証だからだ。」

壮絶な体験の中でさらに人間として魂を成長させた人で興味深く読みました。
これを読むとブラック企業が可愛く見えますが、収容所から解放された結果、心が荒廃していく友人が悲しかったですね。

俺はあんな酷い体験をしたんだから、人の畑を土足で歩いて何が悪い。という癒されない心の傷。
虐待された子供が大人になって自分の子供を虐待するような…。
ブラック企業を止めても心の傷はなかなか治らないでしょう。
ブラック企業と比べるのもなんですが…。

僕は苦悩に値する人間になっているんだろうか、と考えた時、何時の間にか苦悩から目を反らして生きている自分に気付きます。

低い収入。
将来の不安。
つまらない自分。

悩んでいるより何も考えずアイドル番組やAVを見ている方が楽ですから。

でもツラい話を知ることはツラい状況にある人の気持ちを和らげます。


<下からの選別>も面白かった。
収用されたユダヤ人をユダヤ人に監視させるのだけど、あえて人間性が歪んだ人間に収容者を管理させる。
人の気持ちを考える事なく人を酷使出来るのは人間性の高い人ではないんですね。
人間の業の深さを感じます。

人間の残酷さと、それに負けない強さ。
どういう状況で人は死んでしまうのか。
悩んでいる時にこそ読む本かも知れません。

陳腐な言葉ですが、最後の最後まで希望を捨てない人間が生き残る。