AV女優 紗倉まなの「最低。」

以前AV女優と話した時に、なんでAV女優になったのか聞いた時、彼女は「憧れ」と答えた。

 

 僕にはよく分からない「憧れ」ですが、その言葉にウソは無いような気がしました。

人は自分にもウソをつくからホントの事は分からないけれど。

彼女は色んな事務所に面接に行ったらしい。

「それが私にとっての就職活動」と話していました。

 

作者が紗倉まなじゃなかったらどんな風にこの本を読んだのだろう。

作者の顔が見えないケータイ小説だったら手に取らなかったし、

読んでも「しょーもねーな。」と切り捨てていてもおかしくはない感じはしました。

 

この本は作品はAV事務所、登場人物の家族を軸に女性の持つ女性性、

孤独が4つの短編で描かれています。

 

1章 彩乃 AVに誘われて少女から大人になる過程での孤独。

行為中の心理描写も面白かった。

女性の寂しさと男性の寂しさは少し違うのかもしれない。

僕には共感できない寂しさが女性にはあるのでしょう。

2章 桃子 AV事務所を立ち上げる30代の男と彼女の話。

焦点は男の石村に当たっていると思っていたけど、

実はその彼女の心理こそがこの章の中心に感じました。

3章 美穂 女として扱われない事に不満を覚えAVに出演する人妻。

割りとありがちな話に感じ、やや浅い気がする。

4章 あやこ 家族間の女性性を巡るの精神的優劣感。面白かった。

女性に共感出来る話なのでしょう。

女が女として扱われる事の寂しさや劣等感、優越感は

僕には実感できないけれど、男が男らしい何か。

男らしいと周囲に思わせる為の涙ぐましい努力と近いものがあるのでしょう。

 

僕は女性の女性性を考えるよりも、自分が男である、という事を

周りに示そうとすることで、頭が一杯で余裕のない人間なんだなー。

なんて感じたりもしました。

 

作品全体ではユーモラスなキャラクターも描かれているけれど、

いつも孤独が漂っています。孤独というか”漠然とした寂しさ”かな。

 

文学を読む、という事は人間の"痛さ"を安全圏から眺める行為だとおもっているのですが

そこまで重い内容でもなくライトに読めました。

僕にとっての救いは男がAVを観る人間として罪悪感を感じさせられるような描写が少なかったこと。

 

感想が何となくまとまらないのは女性性が描かれているからこそで

男として実感しにくいこと、だからなのだと思います。

 

現代の若い女性にとってAVはそれまでの世代よりも身近な存在なのかもしれません。

女性が読んで共感できる本なのでしょう。