勝者、シバター

シバターは凄かった。

暗黙のルールを逆手にとり、Rizin運営を、対戦相手を、視聴者を騙し切った。

 

大一番の舞台に立ちたいのに立てるかどうか分からない精神状態の対戦相手、視聴率を取りたいRizin運営の弱みを見切った心理戦。

経験値も体格も有利である事を隠す弱腰な演技とプロモーション。

 

自分が視聴率を持っていることを把握したうえで”棄権”というカードをチラつかせ相手を揺さぶり、結果勝つ。

しかも大晦日の大舞台で。

 

格闘家からもRizin運営からも視聴者からも嫌われ、尊敬も信用もされることもないが”名前を売る”という目的は完全に達成されている。

試合に勝っても負けても損しない戦い方。

 

こんな事を出来る人間はそうそういない。

 

朝倉未来のリベンジマッチも

扇久保のベルト獲得も

女子格の王者陥落も

2022年の大晦日に記憶しているのは、格闘技が好きな人間だけだろう。

 

しかしシバターが汚いことをして勝った、というニュースは一般視聴者には記憶されていると思う。

 

試合での勝利こそ格闘家の成り上がる道で、選手は必死にリングの上で戦っている。

晦日はそのトップ選手が技の粋を見せる場であり最高の舞台だ。

格闘技の実力ではシバターより強い格闘家は沢山いる。

 

相手選手も、Rizin運営も、視聴者もシバターをナメていた。

所詮ユーチューバーだと。ピエロだと。

 

だけど明確になったのは客寄せパンダだと思っていた人間は冷徹な戦略家でやり手の個人事業主だった。

シバターにとっては”名前を売る”ことが勝利条件で、そして勝った。

一般的に強者と思われている格闘家に、客寄せパンダのユーチューバーが勝った。

これこそ最高のアップセットだと思う。